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cue! 青木将さん

「雑貨と並列でアートを紹介したい」

第四回目は、暮らしが楽しくなる雑貨や、アートと出会えるお店「cue!」を営む青木将さん。青木さんがセレクトするのは、キッチン用品、器、インテリア雑貨、洋服、アクセサリー、バッグ、調味料やおやつ、本やCD、作家ものの作品などさまざま。“まさるさん”の相性で親しまれ、そのセンスと朗らかな人柄にファンは数知れず。お店の場所を移しながら、やりたいことをカタチにする、徳島の暮らしと文化を育む雑貨屋店主のお話です。

 青木さんが「cue!」をはじめたのは28歳の頃。神戸の大学を卒業し、地元の徳島へ戻り、雑貨店で5年半勤めた後に独立しました。2017年、昭和町7丁目にお店を構える前は、沖浜にある丸い窓が印象的な茶色いレンガづくりの建物で雑貨店を。独立して最初のお店は、水際公園から歩いてすぐのところにある2F建ての建物で、1Fでカフェを、2Fで雑貨店を営んでいました。これまで2回引っ越しをしている青木さんは、物件を選ぶ時のこだわりがあるそうです。

 「ぜったいに譲れないのが窓。窓が大きくて、光が入ってくる物件が好きですね。年齢と共にやりたいことが変わってきたこともあって、物件との出会いと自分がやりたいことのイメージが合わさり、やりたいことのイメージが膨らんだ部分は大きいです。」
 
車の整備工場だった今のお店も、窓から気持ちのいい光が入ってきます。階段を登り、扉を開けると広がる空間は、今までのお店のなかで一番広く、取り扱う商品やカテゴリー数もさらに充実しました。全体的に統一感があるのは、付き合いのあるメーカーさんや、展示会で知り合った作家さんから紹介してもらう、人とのつながりから出会うものが多いのも理由の一つです。

DJとしても活躍する青木さん。
店内はいつも心地よい音楽が流れています。

 料理が映える作家ものの器や、デザインも着心地もいい洋服、装いにさりげなく華やかさを添えるアクセサリーなど、おしゃれなものが並んでいるかと思えば、クスッと笑える置物や、パケ買いしたくなる羊羹が置いてあったり。遊び心をくすぐる雑貨やおやつとの出会いに、時間が経つのをついつい忘れてしまいます。

普段づかいしたい鳥取県の「牛ノ戸焼」の器や、三重県の陶磁器産地の窯元が主体のメーカー「4TH-MARKET」の器と一緒に並ぶ、味のあるタイポグラフィーがそそる羊羹。
 

 数ある商品の中でも、アトリエペネロープのバッグはオープン時から取り扱う、思い入れの深い商品の一つです。

 「お店をやるならぜったいに置きたいと思ったバッグなので、開店する1年くらい前に中目黒のアトリエへ直接お願いにいきました。オーナーでデザイナーの唐澤明日香さんは、そのときのことを今でも覚えてくれていて、お付き合いはもう20年近くになります。いいブランドさんと長くご一緒できてうれしいですね。」

絶妙な色がコーディネートのアクセントになるアトリエペネロープのバッグ。定番の持ち手の小さなトート「シリンダーバッグ」や、フレンチミリタリーコットンを使用したトート「セシル-FM」などの新作も並びます。

 20代、30代、40代と場所を移しながら、雑貨屋を軸に暮らしが楽しくなる提案をつづけてきた青木さん。「20代は“俺の選んだ雑貨どや”みたいな、少しな尖ったものを内に秘めたていました(笑)」と、笑いをまじえながら素直に振り返るところも、人柄を物語ります。
 
 そんな青木さんを信頼する常連さんは多く、結婚や出産を経て、お母さんになっても通いつづけてくれる人がいるそうです。
 
 「雑貨好きな人がたくさん来てくれるので、お客さんにはすごく恵まれていると思います。自分の好みも伝えていきたいけれど、30代になってからは常連さんの暮らしが見えてきて、その人たちの暮らしが楽しくなるかということが自分の中で大きくなりました。そういう提案ができると、僕も楽しくなるので、本当にお互いさまですね。常連さんの顔を思い浮かべながら、新しく取り扱う商品を選ぶことが増えましたね。」
 
 人生のライフイベントごとに変化していく暮らし。そんな常連さんたちの思いに寄り添い、「cue!」も変化していく。自分の少し先の暮らしを提案してくれるお店が近くにあることは、人生がますます豊かになり、楽しくなっていくことにつながるのだと思います。

 
 

 
 

 「cue!」は雑貨の他にも、作家さんの作品を紹介しています。入り口を入って右側、店内の1/3ほどは、ギャラリーと喫茶のスペースです。
 
 撮影時は、日々生活の中で言葉にできない絵を描き続ける画家・河合浩さんの個展期間中でした。SNSで河合さんの作品を見ていたという青木さん。河合さんが作った冊子を「cue!」で取り扱うことになり、そのご縁から今回の展示が実現しました。ちなみに、「cue!」オリジナルの包装紙は、河合さんが手がけたものになります。

 
 

2021年に開催された河合浩さんの個展「See Clues」の様子。

 

 「徳島にはイラストレーターさんをはじめ、作家さんを紹介するギャラリーがないので、展示に力を入れていきたいと思っています。今はコロナでイベントがやりづらい状況ですが、こういうときだからこそ、いい作品をつくっていらっしゃる作家さんを紹介したいです。」
 
 これまでギャラリーで開催したイベントや展示で紹介したのは、イラストレーターの堀本勇樹さん、版画家の小板橋雅之さん、ステンドグラス作家の西冨なつきさん、陶芸家の酒井美華さんなど、暮らしに取り入れたくなる作品をつくる作家さんばかり。
 
 都会に比べると美術館やギャラリーなどでアートと出会う機会が少ない徳島の暮らしに、イラストや器、アクセサリーなど、作り手を身近に感じることができる「cue!」は大きな役割を担っています。今はパソコンやスマホを開ければ、なんでも探すことができる時代だけれど、実際に見て、触れないと味わうことができない感動が作家さんの作品にはあるからです。

 作品を見ながら青木さんが淹れるコーヒーを味わえます。
 

 個人的にベストボーダニストに任命したい青木さんも、あと5年で50歳。今後の展望をお聞きしたところ、“50歳くらいで今のカタチを辞めようか”という驚きの答えが返ってきました。
 
 「5年後くらいにはギャラリーをメインでやっていきたいという思いがあります。それと喫茶店のマスターをやりたいので、コーヒーを淹れながら作品を紹介する場所ができたらいいですね。徳島の高校生はアートと触れる機会が少ないので、絵を描くことを仕事するのが選択肢に入りづらい状況だと思うんです。仕事の選択肢は増えた方が楽しいですし、その可能性を感じてもらえる場所をつくりたい。イラストレーターや陶芸家、写真家など、徳島で活躍する人が出てきたらうれしいですね。」

 
 

 青木さんがやろうとしていることは、徳島の文化を育むこと。普段アートと触れる機会が少ない人にとって、ギャラリーへ行くのはハードルが高く感じるけれど、雑貨と作品が一緒に並ぶ「cue!」ならハードルが低くなる。作品を暮らしの中に取り入れることもしかり。今、青木さんが雑貨と展示を両立させている理由はそこにあります。
 
 雑貨を通して徳島の暮らしを楽しくしてきたネクストステージは、徳島でアートと出会う新しいきっかけ(cue)が生まれる場所を構想中。「喫茶ギャラリーcue!(仮)」に立つ青木さんは、相変わらずボーダーとメガネが似合う、素敵なマスターになっているはず。青木さんの朗らかな挑戦はまだまだ続きます。
 
 最後に、青木さんがどんなお家に住み、どんな暮らしをしているのか聞いてみました。
今住んでいるマンションは、通勤や買い物のしやすさなど、生活環境を重視して選んだそうです。暮らしの中で大事にしているのは、食事の時間。朝は奥さんが先に仕事へ出かけるので、なるべく夜ごはんは一緒に、ゆっくり話をしながらいただきます。普段づかいしている器は、「cue!」で取り扱いをしているものがメイン。料理に合わせて器を選ぶことが、奥さんの楽しみにもなっているそうです。青木さんも毎日違う器で出てくるのが楽しみで、会話がはずむきっかけにもなっています。
器には食事の時間を楽しくする力があることを、日々の生活の中で実感しているからこそ、青木さんの言葉に心が動くのだと腑に落ちました。
 
 
 
 
さて次回は、

青木さんからのご紹介は、
国内外の良質で時代性を捉えたアイテムを
独自の視点でセレクトする
「CONER STORE」のオーナー大賀良平さんです!